2012年04月01日

SSを頂きました(^^)

相方のcyunkitiさんよりSSを頂きました(///ω///)テレ
以前cyunkitiさんが「平凡な10の言葉」というリクエストを募集していて、私もリクさせてもらったんですね。
私がリクエストしたタイトルは「溶ける」。
cyunkitiさん、ありがとうございますv
ものすごっくステキ!ウルウルきました(TT)こういうの大好きです!


【溶ける】



「まだ春一番は吹かない?クラウド」
「まだだよ、母さん」

もう日はだいぶ高くなってきたのに、部屋の中は一向に暖まらない。
クラウドは暖炉に新しい薪を放り込んだ。
暖炉の火は一瞬暗くなったが、少しするとバチバチと炎が乾いた木ぎれを舐めだし、部屋はほんの少し暖まったような気がした。

「裏の畑を見てくる」
「しっかり着込んでいきなさいよ、風邪ひくから」
母ときたら、やっと自分の肺炎が良くなってきたばかりなのに、クラウドの心配ばかりしている。
こそばゆい思いにクラウドは返事をためらい、無言のまま裏口脇の鉤にひっかけてあった古いジャンパーに袖を通した。

扉を開け ると、明るい日差しが目を射る。
暦の上ではすでに春、太陽の光はまばゆく雪に反射して燃えあがるように白く輝く。
きしきしと締まった雪を踏みしめて歩くと、ブーツを履いた足は時折深く沈む。
裏の畑は真っ白な雪に覆われ、それを囲む柵にも厚く雪が積もっている。
柵はところどころ雪の重みで倒れたり歪んだりしており、貧相な畑がますますうらぶれて見える
畑を取り巻く柵が冬の間に壊れたので、こっちにいる間に直しておいてほしいと母親に頼まれたのだ。
斜めにかしいでる柵の雪を払おうとしたが、雪は固く柵に凍り付いており、ちょっと払ったくらいでは落とすことはできない。
クラウドはため息をついた。

先週母が病に倒れたと連絡 があったので、年休をかき集めて急遽ニブルヘイムに帰ってきた。
いや、本当は……。
クラウドはジャンパーのポケットに深く手を差し入れると、その中にある紙片を握りしめた。
逃げるようにニブルに戻ったのだ。
手の中の紙片が小さく音を立てる。
そこに書かれた言葉は完璧に覚えている。

『クラウド、話しがしたい。返事をくれ」
たった一行だけの手紙だし。

ぴーひょろろ〜というのんびりした鳶の鳴き声がしたので空を見上げた。
初春の青い空には緩やかな円弧を描いて鳶が飛んでいる。
こんなに空は青く光りは眩しいのに頬をなぶる風は冷たい。
畑の脇を流れている疎水も凍り付いている。
春たけなわだったミッドガルからニブル に戻ると、季節が逆行しているようだ。
クラウドは両手に力をこめると、凍り付いた柵を起こそうとした。
柵は微かにきしむだけで、ほとんど動かない。



あの時、なんで自分は我慢できなかったんだろう。

(ザックスにキスした)

部屋で飲んでいて、泥酔したザックスについ口づけをしてしまったのだ。
熟睡してると思ったザックスは突然目を開き、クラウドをただじっと黙ったまま見つめた。
その沈黙に耐えられず、クラウドは逃げだし、今日に至る。
ザックスのメールは全て無視した。
あまりにクラウドが返事をしないのに業を煮やしたザックスは、クラウドのメールボックスに手紙をよこした。
殴り 書きの短い手紙を。

(もう友達にすら戻れない)

クラウドの胸が苦い思いで締め付けられる。
抑えていた思いは熱い痛みを伴って胸を焼く。

(このまま除隊してニブルヘイムに戻ろうか)

母はきっ喜ぶに違いない。
どうせ神羅にいたとてうだつの上がらない自分だ。
二度とザックスに会わないで済むならそれに越したことはない。

(二度とザックスに会わない)

その思いはさらにクラウドを苦しめた。

高く上った日は畑に積もった雪をきらめかせる。
クラウドは渾身の力をこめて、傾いた柵を起こした。
凍った土に打ち込んだ柵は多少の力ではびくともしな い。
汗が背中を伝う。

遠くの方で山羊の声がする。
日が上がってきたので、小屋から山羊を出して運動させているのだろう。
山羊を追うのんびりした声がクラウドのところまで微かに響く。
クラウドの後ろの方からも誰かの足音がした。
凍り付いた柵はまだ起こせない。

ーーほんの冗談で言ってみた。

「ザックス!手伝って!」
「おう!」

クラウドの後ろからぬっと黒い皮の手袋をした手が伸び、凍った柵をぐいと力強く起こした。

「あとは木槌でうちこめば大丈夫だ」

どくんと心臓が跳ねた。
口の中はからからで、暑くもないのにこめかみを汗 が伝う。
振り向くな、振り向くな。
そんなわけがないから。

頭上を舞うとんびの声が高くなった。
突然、どうっ!とクラウドの髪を乱して強い南風が吹いた。
春一番だ。

「ニブルってもっと寒いかと思ったら意外にあったかいな」

ゆっくり振り返ったクラウドの目に、太陽の光を浴びて黒髪を南風に翻したザックスが映った。

「ザックス……」

風は暖かく、春の訪れを告げた。
ザックスは笑いながらクラウドを抱きしめた。

ああ、きっと雪ももう溶ける。
春が来たから。


cyunkiti

(2012/3/31)MIHIROさんに捧ぐ
posted by MI. at 06:14| 頂きもの♪